★静・動の美しさ★「どういう本が好きなの?」3年前、 じっとしていても汗が滲んでくる真夏、 一人暮らしの女のコの部屋に お邪魔したことがあった。 「。。。どういう本が好きなの?」 彼女は、私が聞こえないと思ったのか、 大事そうに紅茶をすすっている私に繰り返した。 ちゃんと聞こえていたけど・・ 月並みな質問だけど・・ 実は自分でも恥ずかしいほど、 すっごくドギマギしちゃったのだ。 だって、 初対面で、 そして彼女はとっても キレイだったから!! こんなにジットリーと汗ばむほどの真夏なのに、 彼女の周りだけ、冷房がギンギンに効いているような そんなキレイさだった。 「 好きな本は、、、う~ん、、、、 ”最近”、読んだのは、、田口ランディ なんだけど。。。」 田口ランディは、当時、ネット発の作家として 人気急上昇の時で、たしか3本ぐらい本をヒットさせ マスコミによく取り上げられてた時で、 ”最近”読んだ本 としては、かなり無難な線だった。 (・・でも”好きな”本ではない。) 作家希望の彼女は、 不完全な答えにも関わらず、 私の答えにうなずくように 静かに首をかたむけると話を続けてくれた。 田口ランディと会ったことがある。 と。 2度、会った。 という。 1度目は、田口ランディが、はじめて本を出版するとき、 そして、 2度目は、田口ランディが、数冊めの本を出版するとき。 まるで、 田口ランディは、別人 のようだったと。。 1度目は、"近所のおばさん”で、 2度目は、”女優”だった。 と。 「”売れる”ってね、 こういうことなんだ~。って思ったよ。」 と、ソーサーを手におきながら、 穏やかに紅茶を口にする彼女は、 やっぱり とってもキレイで、 それだけに説得力がありました。 ----------------------------------------------- ----------------------------------------------- <後実談> 彼女は帰り際に、ふと恥ずかしそうに言った。 「ねぇ、気がついた? いま、電車が通ったの。」 そう、彼女の部屋のベランダの向こうは線路。 彼女の部屋の隣は、踏み切り。 玄関を開くと、カンカンカンっと踏切の音が部屋中に けたたましく鳴り響いてきた。 彼女は作家のタマゴということもあり、 住んでいたアパートも質素な造りだった。 私が部屋に居た時も、何度も電車が通ったはずだし、 音はかなり聞こえていたはず。。 なのに、彼女に言われるまで気がつかなかったのですっ! 美しさ というものは、 暑さだけでなく、静けさ まで 味方につけてしまうものかもしれない。 |